雲ひとつない星空を、強い光が横切った。それはきらきらと美しく輝いて、ひとつがふたつに、みっつよっつと砂粒のように砕けていく。一筋の光の尾は長く伸びる。光の粒はどんどん小さく細かくなっていく。それを見上げながら、私はまぶたがじんわりと熱くなるのを感じた。
アルシス「お、渡り星とは珍しい」 |
アーチ「渡り星、ですか…?」 |
ひとつ、またひとつ光は星空に吸い込まれるように消えていく。最後の光が消えるまで一瞬たりとも目を離すことはできなかった。それを見届けてから、私は近づいてきた気配を感じ振り返った。
アルシス「昔、どこかの本で読んだことがある。この星の周りを回っている星にも満たない流星物質が、何かの拍子に周回軌道を外れて旅に出るんだ。こんな感じ」 |
砂の上に小さな小枝で円を描き、その周りに小さな円を、そしてそのひとつから矢印を伸ばした。
アルシス「こういう流星物質は少なくないんだ。この星の重力は気まぐれでね。すぐにこういう迷子を出す」
「流星物質は他の星の重力や軌道に流されながら、大体はどこかにぶつかって消えてしまう。5年、10年、もっとずっと長い間漂流するのもいる。」 |
空を見上げるともうすっかり光は消えて、またもとの通りの星空が広がっていた。
アルシス「極たまに、あんな風に帰ってくるのもいるんだよ。だから、渡り星って言うんだ」 |
アーチ「帰ってきて…消えてしまうんですか…」 |
アルシス「…あの光は「ただいま」だって言われている。僕たちに帰ってきたことを伝えるためにね。長い旅だったろうし、大切に迎えてあげないとなって思うな…」
「あ、夕飯呼びに来たんだった…。早くしないとメディにお椀いっぱい食べさせられてしまうよ」 |
アルシスが一足先に仲間のもとへと帰っていく。もう一度星空を見上げる。そこにはなくとも、瞼の裏にあの輝かしい光が蘇った。
つづきのおはなし